「君、影薄いね」と貴方は言った

ネットの片隅に生きるだらだらしたアラフォーブログ

ガチャ論・前編

■序文
 近年では、いわゆる「ソーシャルゲーム」と呼ばれる分野のゲームも一定の立場を得てきた。かつては蛇蝎のごとく嫌われてきた「ガチャ」という集金システムにも、さほど抵抗感を示さない人間が増えてきたように見受けられる。

 

 ガチャに娯楽性があるのは確かである。しかし、その娯楽性は、ただ単純に享受してよいものではないと私は考える。

 

 私はここで、「ガチャ」という娯楽のいろいろな側面に着目しつつ、各自が「どういう立場でガチャに接するべきか?」を考える手助けになるものを提示したいと考え、筆をとる次第である。

 

■コミュニケーションとしてのガチャ

 ソーシャルゲームの隆盛はめざましく、現代のオタクシーンにおいては、人気のソーシャルゲームは、欠かせない話題のひとつになっている。かつてのドラマや歌謡曲が担っていた「共通の話題」という役割を、現代ではソーシャルゲームが担っているのであろう。

 

 その中で、おそらく最も普遍的に、万人が盛り上がれる話題が「ガチャ」である。なぜなら、シナリオやシステムに関しての感じ方は人それぞれだが、ガチャは「金銭を投入して、結果が返ってくる」という単純な仕組みであり、そこに各自の感想が入り込む余地が少ないからである。「飲み会の席で、同時にガチャを回す」などのコミュニケーションも、近年では散見されることが多くなってきた。

 

 こうしたコミュニケーションは一概に否定できるものではない。「ガチャ」という娯楽がエンターテイメント性を内包していることは事実であり、場の盛り上げに一役買うことがあることも、また事実である。

 

 振り返って考えてみれば、「酒の席を盛り上げる行為」というのは、いつの時代も必要とされてきた。それは、例えば「かくし芸」であったり、「一気飲みコール」といったものである。しかし、そう考えた時、「ガチャ」という盛り上がりの手段は、コストパフォーマンスが極端に悪いということには、十分注意しなくてはならない。

 

 また、「かくし芸」や「一気飲みコール」という文化は、現代では多くの人間が「悪い文化」だと考えていることにも、留意が必要である。

 例えば、「アルコール・ハラスメント」という言葉がある。これは、飲酒の強要などを含む迷惑行為の総称だ。たとえ場を盛り上げるためであったとしても、本人の意思にそぐわない行為の強制は、ハラスメント(いやがらせ・いじめ)なのである。

 

 当然ながら、これは飲み会の席でのガチャにも当てはまる。気が進まない相手に対し、ガチャを回させることを半ば強要するのは「ガチャハラスメント」であり、迷惑行為だという認識は、広く持たれなければならない。

 

 同時に、気が進まない側も、その場の雰囲気に流されず、きちんと断る勇気をもたなければならない。なぜなら、「ガチャを回す」と決断した以上は、それは自己責任になるからである。心の何処かで「回してもいいか」と考えているならばともかく、本当に気が進まないのであれば、きちんと断るべきである。

 

 そのコミュニティの中で、「ガチャを回すことを断っても構わない」というコンセンサスをとっていくことが、良好な関係を構築していく上で重要になってくるだろう。

 

■「計画性を養う練習」としてのガチャ
 ガチャは、一般的には「射幸性を煽るもの」と認知されている。確かに、ガチャは「出るか、出ないか」の2つしか結論がなく、少額で目的のものを手に入れる者もいれば、大金を投じても手に入れられない者もいる。少額で目的のものを手に入れられた者は、その快感が忘れられず、ふとした瞬間に「ガチャを回したい」という衝動に襲われることになる。

 

 しかし、ガチャが単純に「射幸性を煽るもの」だったのは、過去の話である。現代のガチャは、「計画性を養うもの」へと変化した。
 これを変化させたのは、「詫び石」と「天井」の概念である。
 
「詫び石」とは、定期的に配布されるゲーム内通貨のことである。
 現代のソーシャルゲームでは、何らかのクエストを初回にクリアした際や、緊急メンテナンスが行われた際、あるいは、リリース○周年などの記念日に、ゲーム内で金銭の代わりに使用できるゲーム内通貨を配布するのが一般的である。ここでは、それらを総称して「詫び石」と呼ぶ。
 
「天井」とは、「その設定された回数ぶん、ガチャ回せば、必ず目的の物が手に入る」と定められた回数のことを呼ぶ。

 今もっとも「天井」という言葉が使われているであろうグランブルーファンタジーにおいては、天井は300回、9万円分に設定されている。
 9万円はかなりの大金である。いくら目的のものを手に入れるためとはいえ、庶民が簡単に払える額ではない。

 

 では、どうするか?
 それは、「ゲームに対する投資計画」を立てるのである。

 

 一ヶ月間でもらえる詫び石の大体の数を計算し、目玉となるカードのリリース時期を予測し、その間までに詫び石がどれくらい貯まるかを計算する。詫び石の数が天井まで届かない場合、その差額をどう捻出するか? を考え、現実の予定を計画していく。それが、ソーシャルゲームで出費を抑えるためのテクニックだ。

 

 では、詫び石が少なく、天井が設定されていないゲームをプレイしている場合はどうするか? それは、「そんなゲームは今すぐやめる」が正解であろう。

 

 ここで問題になってくるのは、先に触れたような「衝動」である。
「ガチャを引きたい」という欲求は、厄介なことに非常に強いものである。しかし、それに抗えないほどではないというのが、個人的な感想だ。

 ガチャ欲とは、瞬間的な欲求である。そのため、それを押さえ込む手段を用意しておく(例えば、「軽く運動をする」「寝る」など)ことが、ガチャ欲に抵抗するためには必要になってくる。また、事前に計画を立てておくも、衝動的なガチャ欲を押さえ込むのに有効である。

 

 重ねていうが、ガチャはコストパフォーマンスの悪い娯楽である。
 そのため、無秩序なガチャは生活に打撃を与え、QoLを著しく下げる危険性を孕んでいる。

 そのことをしっかり受け止め、無秩序なガチャではなく、計画的な投資を行うことが、ソシャゲをプレイする上では求められる。
 

後編に続く

ガチャ論・後編 - 「君、影薄いね」と貴方は言った