■序文
昨今では、数え切れないほど多くのアニメが、3ヶ月毎に放送されている。そうした数多のアニメを評価する言葉のひとつに、「クソアニメ」というものがある。
この言葉は、非常に多くの意味を内包する言葉であるにも関わらず、その字面から「単純に面白くないアニメ」を意味する言葉として使われることも多い。
一クソアニメ好きとして、このような誤用を見るたびに、非常に強い憤りを覚える。そこで私は、世に正しい「クソアニメ」の意味を啓蒙するため、ここに筆を執る次第である。
しかし、「クソアニメ」の意味するところは非常に繊細であり、その意味を完璧に定義することは、個人ではとうてい不可能である。そのため、ここでは、クソアニメ視聴に必要な心構えや、「あくまでも私はこう考える」というクソアニメの判断ポイントを何点か挙げると同時に、時にクソアニメと判別し難い場合がある「名作」の条件についても触れていきたいと思う。
■「クソアニメ視聴」に求められる心構え
クソアニメを視聴する際、我々にはひとつの心構えが求められる。それは、「放送中、いつでも掌を返すことができる心構え」である。
クソアニメは、決してクソアニメとして生まれてくるわけではない。しかしながら、監督のやりたいこと、見せたいことに視聴者がついていけないとき、人はそれを「クソアニメ」と評価する場合がある。
こうしたアニメは何らかのパワーを持っていることが多く、やがて視聴者の多くを魅了する名作となるか、もしくは、独りよがりさを視聴者に見抜かれ、駄作の烙印を押されることになる。
このようなアニメを、いつまでも「クソアニメ」と評価し続けるのは、クソアニメ視聴者として非常にナンセンスである。その作品のブレイクポイントを敏感に察知し、時が来ればきちんとした評価を下せる「センスあるクソアニメ視聴者」になるためにも、いつでも掌を返す準備をして視聴に望みたい。
時に、周囲が「クソアニメだ」と評価し続けたとしても、自分が「名作」、あるいは「駄作」と判断したのであれば、強い心を持ってそれを口に出していくことも、クソアニメ視聴者の義務である。
安易に「クソアニメ」と評価したい気持ちをねじ伏せ、、己の内面と向き合い、真なる自分の心を見出すことになるクソアニメ視聴は、克己の修行であるといえる。
■クソアニメの判断ポイント
クソアニメの判断ポイントは、人によって大きく異なってくる。ここでは、あくまで「クソアニメに含まれる率が高かった要素」と、個人的な判断ポイントを列挙していく。
時折、具体的な事例としてアニメの名前を挙げることがあるが、そのアニメがクソアニメだというわけではないことに注意していただきたい。
・キービジュアルが既に力尽きている
本来、ユーザーの目を引くために、もっとも力を入れなければならないキービジュアルが既に「落書きか?」というような、一見して予算のなさを伺わせるようなアニメは、クソアニメ率が高い。公式ホームページのキャラクター紹介が力尽きている場合も同様である。
例:
戦姫絶唱シンフォギア(1期) http://www.symphogear.com/
聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> http://warubure-anime.com/
・印象的なセンテンスがある
印象的なセンテンスを持つアニメは、クソアニメである確率が高い。
例:
「一人旅団」(革命機ヴァルヴレイヴ)
「思い……出した!」(聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>)
「待たれよ」(アルドノア・ゼロ)
「……んだよ、意味がわかんねえ」(魔法戦争)
・特定の声優が出演している
特定の声優が出演しているアニメは、クソアニメである確率が高い。
かつては「木戸衣吹が出演するアニメはクソアニメ」という定説が存在したが、「すべてがFになる」がそこそこ普通な出来だった上に、「アヴァベルオンラインアニメ化中止事件」によって、「木戸衣吹が出演するクソアニメは放送されるが、M・A・Oの出演するクソアニメは放送もされない」と一部で(主に俺)話題になり、勢力図が塗り替えられつつある。
(スマホ向けRPG「アヴァベルオンライン」のテレビアニメ化が中止に 運営元は「諸般の事情」と説明 https://gunosy.com/articles/RIA69)
しかし、一部の有識者の間では、「木戸衣吹やM・A・Oの演技を受け止めきれないアニメ側に問題があるのではないか?」と疑問が呈されている。
・OP、またはEDが名曲である
OP、またはEDが名曲であるアニメは、クソアニメである率が高い。
例:
魔法戦争OP:https://www.youtube.com/watch?v=pb6HN_NFD20
魔法戦争ED:https://www.youtube.com/watch?v=fe8i1aXZ2SI
ビビッドレッドオペレーションOP:https://www.youtube.com/watch?v=BSRRsXuttgQ
※注意点
確かに、クソアニメの条件としてOPが名曲であるアニメはクソアニメ率が高い。
しかしながら、決してOPに起用してはいけない歌手が存在することが、個人的な調査から明らかになっている。その歌手とは、AKINO with bless4である。
AKINO with bless4の曲は、確かに名曲揃いである。しかし、AKINO with bless4をOPに起用した場合、そこから放たれる圧倒的な”圧”は現代アニメが受け止めきれるものではなく、数多くのアニメがAKINO with bless4の前に敗北してきた。
しかし、逆に言えば、”本編殺し”とも呼べるAKINO with bless4には、それだけの「名作オーラ」備わっているということである。いつの日か、アニメ制作現場が次のステージに進み、AKINO with bless4にアニメの内容が追いついたとき、その相乗効果は計り知れないものになるかもしれない。
・革新的・先進的な手法を用いて作られている
クソアニメを分析すると、革新的・先進的な手法を用いて作られていることが多々あることがわかる。
・戦姫絶唱シンフォギア
カット割りや台詞回しによって展開を圧縮し、「4話1クール=12話で3クール」とすることに成功しており(12話を「結」と考えれば4クール)、筆者はこれを「シンフォギア三倍段」と呼んでいる。
GやGXとシリーズを重ねるごとにこの手法は薄れつつあるが、「必要な部分を描写するために、少しでも余計な部分は絶対に省く」というマイナスの手法は、「君の名は。」や「シン・ゴジラ」でも採用されている。
・メカクシティアクターズ
筆者が立てた「「ささみさん@がんばらない」でイラストレーター左氏の絵をそのまま動かした功績により、今後10年、どんなことがあってもシャフトをdisらない」と誓いの8年分を消費させたと(俺の中で)話題の「メカクシティアクターズ」が採用している、「アニメをミュージックビデオと捉え、カゲプロのファン層が買いやすい価格帯に設定した円盤を毎月発売する」という手法は、なかなか他に類を見ない商売の手法である。
クソアニメの中には、こうした「尖りすぎた手法」を採用したがゆえに、一般的な視聴者がついていけずに「クソアニメ」に分類されてしまっているものもある。クリエイターは、こうしたクソアニメの中から手法を学び、一般に受け入れられるように手を加えることで、ヒット作を生み出せる可能性がある。
つまり、クソアニメはアニメ界のパリコレクションといえるだろう。
・犬がしゃべる
犬がしゃべるアニメはクソアニメである。
■名作の判断ポイント
ここからは、「時に、クソアニメと判別をつけづらい名作アニメの判断ポイント」を紹介していく。
・OPかEDで走っている
OPかEDでキャラクターが走っているアニメは名作である。
・突然ミュージカルがはじまる
なんの脈絡もなくミュージカルが始まるアニメは、当然だが名作である。
・野球回、またはサッカー回がある
いうまでもないことだが、野球回、またはサッカー回があるアニメは名作である。
その回が最終回に近ければ近いほど、名作の度合いは高まる。
・女子が女子を平手打ちする
もはや万人の共通認識であるため、言う必要があるのか疑問だが、女子が女子を平手打ちするアニメは名作中の名作である。
■「クソアニメ」に似て非なるアニメ
クソアニメと似て非なるアニメが存在することは、余り知られていない。
このアニメは「まなめはうす枠」と呼ばれており、先日、惜しまれながらもその長い歴史に幕を閉じた(※1)「まなめはうす」管理人が好んで視聴するタイプのアニメである。
このアニメは多くの場合、
・エロゲ原作である
・ギャグ寄りである
・ナンジョルノが出演している
・学園モノである
などの要素を含んでいる。
これらのアニメは「まなめはうす枠」であり、クソアニメ好きに話題を振っても微妙な顔をされてしまうため、注意したい。
■最後に
「クソアニメ」は、個々人によって大きく判断ポイントが異なることは、先に述べたとおりである。だが、「クソアニメ」に共通するのは、「どこか、強く人を惹き付ける魅力がある」ということである。
ただの駄作を「クソアニメ」とはまったく異なるものである、安易にそうした呼称を用いることは、アニメに対する侮辱である。クソアニメに理解を示すことが難しい一般的な感性の持ち主であっても、そのことだけは十分に注意して欲しい。
また、クソアニメに感じている魅力は人それぞれであるため、共通言語として語ることはほぼ不可能である。同じクソアニメが好きだからといって、話が盛り上がるわけではないということにも、十分留意すべきであろう。
※1 まだやっていると本人から抗議がきたので、まなめはうすもみんなよろしくね http://maname.hatenablog.com/