先ずは、知人が電子書籍デビューということで おめでとう ございます。
この記事は一月頃に書いて一旦お蔵入りにしようとしていたんですが、まなめさんやしんざきさんといった知人が電子書籍を出版され、また、ここ一ヶ月で電子書籍を巡る状況も大きく変化したという事で、ここらで一発、改めて書いておこうと思い手をつけました。
趣旨としては、誰もが名前は聞いた事があってもイマイチピンと来ていないであろう(まぁ、僕がそうだったので調べたわけですが……)電子書籍の現状を、なんとなく皆さんにお伝えしようというものです。
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さて、こういった記事を読みました。
スマートフォンでの閲覧に適した、日本初の新しいコンセプトの電子書籍
「impress QuickBooksTM」を2月下旬より刊行開始
http://www.news2u.net/releases/94477
記事を軽く読むと、どうやら「気軽に読み捨てられる新書未満のもの」を目指しているようですね。
「多くの人が知りたい旬の話題をスピーディに電子書籍化して刊行」というコンセプトからすると、「その時興味のある話題に対して、気軽に手早く知識欲を満たせる物」としての立ち位置を狙っているのでしょう。
媒体がスマートフォンメインであるのも、通勤、通学の最中のお供に、という事なのでしょうね。
特筆すべきは執筆者にブロガーなどを採用している点で、これは(所謂はてな界隈などの)「知識欲を満たす為に情報を日常的に摂取ている層」を最初から引っ張ってこようという狙いがあるのでしょう。
さて、その電子書籍についてです。
皆さんも「電子書籍」という名前くらいは聞いた事があると思いますが、その実態についてはどうでしょうか? 恐らく、ほとんどの方が電子書籍というものの中身についてはご存じないのではないかと思います。
それも当然で、現在の電子書籍界隈は「混迷を極めている」としか表現できないのが現状です。
まず「電子書籍を読むには何が必要なのか?」というところから始まり、
「電子書籍リーダーは何を選べばいいのか?」
「自分が選んだリーダーで○○の本は読めるのか? 読めないのか?」
「PCでも読めるのか」
「あっちの店とこっちの店で同じものが売っているが、何が違うのか?」etc...
電子書籍に関する疑問は尽きません。
正直に言いますと、これらの全てを把握するのは困難です。
そこでここでは、皆さんに代表的な電子書籍リーダーや、書籍の販売サイト、電子書籍に関するニュースなどを取り上げて、簡単にご理解いただければと思います。
1.電子書籍を読むもの、「電子書籍リーダー」
さて、まず電子書籍リーダーに関してですが、世に電子書籍リーダーは数あれど、購入を検討すべきものは(現状では)以下の通りかと思います。
A.Sony「Reader」
http://www.sony.jp/reader/contents/?s_tc=jp_ad_reader001_Og_01_0113
B.Amazon「Kindle4 wifi」
http://www.amazon.com/gp/product/B0051QVF7A/
C.Amazon「Kindle Fire」
http://www.amazon.com/Kindle-Fire-Amazon-Tablet/dp/B0051VVOB2
(上記二つは現在米Amazon経由でしか購入できません)
D.Apple「iPad」シリーズ
http://www.apple.com/jp/ipad/features/
E.各種スマートフォン
ここではこれらをふまえ、各種を軽くご紹介していこうと思います。
A.国産では圧倒的なアドバンテージを持つSony「Reader」
ReaderはSonyが発売している電子書籍リーダーです。
5型と6型があります。個人的には6型の方が見やすいかなと思います。
5型では単独で書籍の購入を行う事はできませんが、6型にはWifiタイプと3G+Wifiタイプがあり、単独で電子書籍を購入・閲覧することが出来ます。
画面には電子ペーパーを採用しており、目に優しい事がウリのひとつとなっています。
僕も店頭でReaderを見てみた事がありますが、この電子ペーパーというのがかなりスゴイ。
まるで紙に印字されているような錯覚を覚えるほど、自然に文字が表示されます。
一回の充電で、物によっては約7週間バッテリーが持ちます。
長時間バッテリーが持つというのも、電子ペーパーを使用した電子書籍リーダーの利点ですね。
しかし、Reader最大の利点は、その取り扱い書籍数にあります。
Readerには「Reader Store」という専用の電子書籍販売店があるのですが、2012年2月時点でのReader Storeの取り扱い品目数は40000点を数え、(公式の声をそのまま信じるのであれば)毎月2000点もの書籍が追加される予定となっています。
その取り扱いも幅広く、例えば現在(2012/2/28)アニメが放送中の「ちはやふる」などのコミックがあるかと思えば、アガサ・クリスティのポアロシリーズ「ABC殺人事件」があったり、はたまた「涼宮ハルヒの驚愕(後)」なんてラノベがあったりもします。
ちはやふる(7)
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000012720800700701/
ABC殺人事件
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000014717800100101/
涼宮ハルヒの驚愕(後)
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000014477600100101/
値段的な面ですが、これは正直ピンきりですが、大幅に安いという事はあまりありません。
先にあげた三冊を見比べてみると、
書籍価格 電子書籍価格
ちはやふる 440円 420円
ABC殺人事件 840円 700円
涼宮ハルヒの驚愕(後) 580円 576円
となっており、比較的新しめの書籍に関してはほとんど値引かれていない事がわかります(まぁ、サンプル不足と言われればそれまでですが……)。
こういうのもありますね。
不思議の国のアリス(多田幸蔵訳)
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000012243500100101/
ちなみに上記の本は多田幸蔵訳と説明中にあるので、恐らく1975年に旺文社文庫から出たものだと思われます。違ってたらすみません。当然の事ながら絶版です。古本屋なら安く手に入るかもしれませんが……。
絶版なので値段の比べようがないですが、420円なら手軽な気もしますねえ……。
たくさん出ているからかアリスは複数登録されており、
不思議の国のアリス(新潮社)
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000013376900100101/
こちらの不思議の国のアリスは、何故かAmazonの商品の方が4円安いです。なんだそりゃ。
また、Readerは紀伊國屋書店BookWebや楽天イーブックスストアとも提携しており、どちらのストアで買った電子書籍も、Readerで読む事が出来ます。
紀伊国屋やイーブックストアにも、結構本がありますね。
僕が密かに読みたいと思っていた「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」とか。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9986709636&TYPE=EBOOK
これは315円と、書籍版(630円)に比べると実に半額という、大層な値引率です(2/28現在)。
たまにこういう物を見つけるとお得な気分になりますね。
最初に話題にした「impress QuickBooksTM」もReader対応なので、読む事が出来ます。
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さて、ここまでは利点を多く述べてきましたが、もちろん欠点もあります。
まず第一に、電子ペーパーは白黒だという事です。
小説を読むならそれで構わないのですが……例えば、僕が電子書籍を多く活用するであろうマンガやラノベといったジャンルでは、「表紙絵」というのはかなり重要なファクターです。
その表紙絵が、なんと! Readerでは白黒でしか表示されません。
これは正直、かなり致命的と言わざるを得ません(多くの読者の方には馬鹿馬鹿しいと思われるかも知れませんが、同意してくださる方は少なからずいるものと信じています)。
また、これは電子ペーパー全体に言えることですが、ページをめくる際にかなりの「ちらつき」が出ます。特に読書自体に問題はないのですが、見栄えがあまりよくないです。
さらに、電子書籍販売店の中にはiOSやAndroid端末でなければ読めないものがあるのですが、そういった電子書籍はReaderで読む事が出来ません。
そして恐らく最大の障害と思われるのが、その値段です。
5インチでWifiや3G無し、内蔵メモリ2Gのモデルで9980円。
6インチ3G+Wifiの最上位モデルになると、実に25800円(いずれもソニーストアでの価格)になってしまいます。
電子書籍最大の障害は「電子書籍リーダーが高い事」の一言に集約されると思います。
Readerは個人的にかなり魅力を感じている商品なのですが……。
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B・C.Amazonが放つ黒船は日本市場を席巻するか? Amazon「Kindle4 wifi」「Kindle Fire」
ご存知、Amazonが発売している電子書籍リーダーです。
KindleはReaderと同じく電子ペーパーを用いた電子書籍リーダーで、KndleFireはiPadに代表されるようなタブレット端末です。もっとも、その用途の殆どは電子書籍リーダーとしての機能に特化しています。
スペックや現時点での利点はそれぞれ、
Kindle4:
6インチディスプレイで電子ペーパーを使用、稼働時間は約一ヶ月程度、内蔵メモリは2G(ユーザーが利用できるのは1.25G)、3GモデルはなくWifiのみなどなど……がありますが、正直細かい事を抜きにしてぶっちゃけ安い! それが一番の魅力です。
1ドル=80円と計算しても9000円で買えます。
もっとも、これに送料がかかるので、結局のところ1万は超えるわけですが……。
KindleFire:
7インチフルカラー、IPS液晶! なのでラノベやマンガの表紙がカラーで見られる!
現時点ではこれが最大のウリです。
内部メモリーは8G(ユーザーが利用できるのは6G)で、通信方式はWifiのみ。AndroidOSを使用しています。
まぁ、これもそこそこ安いですね。
1ドル=80円換算で16000ちょっとで買えます。
KindleとKindleFireの利点は以上です。
え?
と思われた皆さん。嘘ではありません。
現時点でのKindleは、利点よりも圧倒的に欠点が多い商品です。
まず、現状では日本で販売されておらず、米Amazonを経由してしか購入できません。
次に、Amazonの電子書籍販売店「KindleStore」では和書の取り扱いがありません。よって、もしKindleを手に入れたとしても現状では(自炊したもの以外)洋書しか読めません。
KindleFireにはクラウドストレージサービス(購入した物はいつでもAmazonから自由にダウンロードできる)があるのですが、洋書ばかりではご自慢のクラウドストレージもあまり意味を成しません。
また、Amazon Appstore(Amazonの立ち上げたAndroidMarket)は認証が必要なため、アメリカ国内でしか使用できず、日本では本当にただの自炊した本が読める板にしかなりません。
さらに、これは仕方のない事ですが、KindleFireの稼働時間は8時間程度と、通常の電子書籍リーダーに比べると稼働時間の面で大幅に劣ります。
もっとも、これらの欠点は「そもそも日本で売っていない商品を日本で使用する」という歪みによって生まれているもので、Kindle自体は大変魅力的な商品だと思います。
KindleStoreにしても、米国のAmazonはReaderStoreと比べて遥かに安い価格で書籍販売したりするので、もしそれが日本でも実現すれば、Kindleは日本国内でも魅力的な商品となるでしょう。
そして、それはそう遠い事ではありません!
米Amazonが電子書籍端末『Kindle』を4月国内発売へ、無料でドコモ回線を利用
http://appllio.com/news/20120211-1589-amazon-kindle-release-in-japan
※
D.日本でもおなじみ、電子書籍リーダーとしても使えるApple「iPad」シリーズ
これの説明が必要でしょうか?
手にいれ易さやOSのサクサク具合、豊富なアプリ、国内での知名度、電子書籍店の充実した対応、画面の大きさから可読性抜群など、利点の枚挙には暇がありません。
紀伊國屋書店Kinoppyやebookjapan、BOOKWALKERなどの電子書籍店もiOSに対応しており、特に電子書籍専門の端末を持つことに意義を感じないのであればこれで十分ではないでしょうか?
欠点らしい欠点も見当たりませんが、強いて言うなら「電子書籍リーダーとして手に入れるには高い」という事でしょうか。Wifi版でない限りソフトバンク回線もついてきて、鬱陶しいことこの上ないかもしれません。
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E.画面が小さく可読性最悪。だが……「各種スマートフォン」
初めに言っておきますが、スマートフォンは電子書籍リーダーとして向きません。
操作もし辛く、「電子書籍リーダー」として見た場合、欠点しかないでしょう。
しかし、スマートフォンにはそれを補ってあまりある大きな魅力が備わっています。
それは、「電話である」という事です。
携帯電話は、現代社会において必需品の一つです。
よって、既に貴方の手元にある可能性が大変高いでしょう。
もし、貴方が既にスマートフォンを持っているのなら、大した手間もなく電子書籍を閲覧することが可能になるわけです。
電子書籍最大の障害は、先ほども触れましたがその「値段」です。
わざわざ本を読むのに、何故初期投資しなくてはならないのか?
これから電子書籍を利用とする人間には、常にその疑問が付きまとうでしょう。
スマートフォンはこの最大の障害を廃し、気軽にユーザーと電子書籍とをつなぐ架け橋なのです。
長くなりましたので(ていうか飽きたので……)、いったんここで筆を置こうと思います。
次回は電子書籍の取り扱い店や電子書籍自体の問題点について、ニュースを交えつつご紹介出来たらなと思います。
それでは!
※追記
というわけで、後編を書きました
http://blue876.hatenablog.com/entry/2012/03/01/131745